トウカ:32歳。無職。頭はいいが不器用な性格。ジュンは弟の会社の従業員。
ジュン:28歳。まじめな会社員。トウカは勤務先の社長の姉。
栄養が健康を作り、パフォーマンスを上げる
トウカがスーパーで買い物をしていたところ、疲れた様子のジュンが声をかけてきた。
以前会ったときはエネルギッシュな印象を受けたが、今のジュンはどこか調子が悪そうに見えた。
トウカさん、お疲れ様です。
こんなところで奇遇ですね。
あぁ、ジュン君か。久しぶりだな、仕事終わりか。
……なんだか顔色が優れないように見えるが、体調は大丈夫か?
体調は問題ないんですけど、最近やけに疲れやすくて。
自炊する元気もないから毎日こんな感じなんです。
のり弁に野菜ジュースか。
あまり口出しはしたくないが、良い食事とは言えないな。
健康にあまり悪くないのは分かってますよ。
けど、自炊をすると勉強や趣味の時間が取れなくて。
健康だけじゃないぞ。
適切に栄養を採らないとパフォーマンスの低下や老化の加速につながる。
きみの様子からすると、もしかしたら現代型栄養失調にあたるかもな。
え、なんですかそれは……!
でもわたし、定期健診で悪い結果が出たことはないですよ。
健康診断では栄養状態はみないからな。
このままだと、疲れやすく集中力が持たず年齢のわりに老けた人間になってしまうぞ。
すごく怖いこと言いますね……。
でも栄養バランスの取れた生活って難しそうだし、お金もかかりそう。
そんなことはない。
満尾正さんの著書
「食べる投資 ハーバードが教える世界最高の食事術」にパフォーマンスと生産性を上げて、アンチエイジングにつながる栄養学が紹介されている。
よかったら買い物しながら軽く教えてやるが、どうだ?
おぉ、かっこいい表紙ですね。
ぜひ!おねがいします!
著者の満尾正さんについて
まずは、著者の満尾正さんについて紹介しよう。
彼はアメリカで最先端のアンチエイジング(抗加齢)医学を学び、日本で初めてアンチエイジング専門のクリニックを開業した医師だ。
アンチエイジングですか。
美容に興味がないわけではないので、気になりますね。
アンチエイジングと聞くと美容のイメージがあるが、満尾さんの場合は
身体内部の老化現象の進行を遅らせることを真の目的としている。
身体の内部からですか。
そうだ。
満尾さんはクリニック開業以前に、ハーバード大学に留学して栄養学を学んでいる。
栄養学は日本ではあまりなじみがないが、アメリカでは予防医療として認識されている。
アメリカの医療費はとても高額なため、そもそも病気にならないために予防医療が広く知られており、健康意識が日本人と比べて高いんだ。
健康に関心があるのは国民性も関係あるんですね。
そのとおりだ。
日本人は栄養についてあまり詳しくないから、まずは
栄養知識を身に着けて実践することが健康という資産を作り上げる投資になることを知る必要があるわけだ。
本書では、食事こそが人生最大の自己投資だと言っており、これを
食べる投資と表現している。
栄養失調の日本人と世界の栄養学の常識
栄養学が大切なことは分かりましたけど、日本人の食生活はそんなに悪いですか?
日本人の7割くらいが1日3食しっかりとってるって聞いたことありますよ。
食事をとっていれば問題ないというわけではない。
バランスが悪ければ必要な栄養素が不足し、不必要なものが過剰になってしまう。
この状態がさっき話した現代型栄養失調だ。
通常の健康診断では分からないことだからこそ、自分で適切な知識を身につける必要がある。
現代型栄養失調になると、どんな影響があるんですか?
例えば、日ごろから加工食品や糖質を多く含む食品ばかりだと
- ビタミンやミネラル不足によるメンタル不調
- 食物繊維不足による腸内環境悪化
- 血糖値の乱高下によるだるさや眠気
- 身体内部の炎症による免疫の低下や疾患の発症
といったことが考えられるな。
コンビニやスーパーでは手ごろな食品が増えたし、たしかに便利だ。
ただ、忙しいというのを言い訳にしてなにも考えず口にし続けたら、かならず後悔する日がくる。
なんだか実感があります……。
それじゃあ、アメリカではどういった状況なんですか?
世界一の経済大国だし、忙しい人が少ないはずがないですよね。
アメリカの場合、一部の企業はビジネスパーソンの健康を保つ重要性を認識している。
身体が健全であればパフォーマンスや生産性が上がり、心の健康にもつながるためうつ病の発症や離職の抑制にもなることが理解されているんだな。
NASAによる心身の健全化には血糖値が大きく影響するという発表もある。
企業が従業員の健康を率先しているんですね。
でも、それ以外の人たちはどうしてるんですか?
アメリカでは予防医療が広く知られていると伝えたが、スーパーでは鮮度のいい有機野菜やナッツの量り売りなどが並んでいて、消費者の健康意識の高さがうかがえる。
また、栄養そのものを重要視しているから、食事だけで不足する場合はサプリメントで効率よく補うことをしている。
ビジネスパーソン全体のパフォーマンスや生産性が底上げされているからこそ、いまのアメリカが作られたんだろうな。
日本の経済がほかの国と比べて低迷しているのは、そういうところも影響しているかもしれないですね。
本書では、栄養不足が不調につながる理由や、日本の栄養学の現状などを詳しく解説している。
また、健康につながる具体的な食事や食生活、とるべき栄養素の種類、不足しがちな栄養素などについても非常にわかりやすく紹介されている。
体に悪い食品と食生活
栄養学と食べる投資か。
よし、今から薬局でサプリメント買ってきます!
おちつけ。
栄養の重要性は分かったようだが、とるべき栄養とは反対に食べるべきではない食事も多く存在する。
本書では、食べる投資とは対照的に
食べない投資と表現している。
食べるべきではない食事ですか。
血糖値に影響する糖質は良くなさそうですね。
そうだな。
ただし、糖質は体を動かすエネルギーになるから減らしすぎるのは危険だ。
ハーバード大学の研究によれば、糖質過多のグループと糖質不足のグループどちらとも死亡リスクが高いという結果になったんだ。
本書では、適正な糖質摂取量と合わせてマイルド糖質制限を紹介している。
糖質抜きダイエットって聞いたことありますけど、自己流のやりかたは危ないんですね。
他にはどういったものが体に良くないんですか?
ほかには、
- 甘い飲み物
- 糖度の高い食べ物
- 白い主食
- 植物油脂
- 高温調理された食べ物
- 食品添加物
- 有害金属を含む食べ物
などが紹介されているな。
基本的に、身体に悪い食べ物に共通することは、糖質を多く含んだものと細胞や血管などの身体の炎症につながるものだな。
本書では、どういった食べ物がどのような理由で危険なのか、専門家の意見として紹介されている。
そう言われると、普段から体の悪いものをけっこう食べてる気がしますね。
そうだろう。
また、食べない投資というのは、食べ物のことだけを指してない。
食べる時間や喫煙、飲酒などが挙げられるな。
食べることを意識して休むファスティングも食べない投資のひとつとして紹介されている。
正しい食生活で最高のパフォーマンスを得る
ありがとうございます、今日はとても勉強になりました。
……お弁当とジュースは返してこようかな。
仕事をがんばるために粗末な食事をしていたら、仕事の効率が落ちて本末転倒になってしまう。
食事は自己投資だと考えて、自分の生活について食生活も含めて見直してみるといい。
本書では、今回紹介した栄養の重要性や食べない投資のほかに、
投資になる食事のレシピ20選
パフォーマンスを最大化する10の食事術
など、具体的な内容が非常にわかりやすく紹介されている。
食べる投資と食べない投資、どちらもチャレンジしてみます!
ずうずうしいお願いですけど、これからお邪魔して一緒に実践させてもらえたりしないですかね……?
もちろんいいぞ。
わたしは料理が嫌いだから、きみのところの社長に腕をふるわせよう。
最近忙しそうだし、気分転換になるだろう。
わ、わーい……。

